中国市場投資 2021/09

 市場概況: 9月の中国株式市場は、前月末比で下落しました。 月の序盤、中国政府が中小企業向けの新市場として「北京証券取引所」の設立計画を発表したことや、政府高 官が「民間経済を支援する方針に変わりはない」との考えを示したことなどを好感して、中国株式市場は上昇基 調で推移しました。また、商品相場の上昇などを背景に、資源関連銘柄を中心に買いが広がったことも、相場全 体を押し上げました。しかし月の中盤、中国当局による国内インターネット企業への規制強化の動きが嫌気され たほか、大手不動産開発会社の債務悪化に対する警戒感の高まりなどを背景に、中国株式市場は下げに転じ ました。また、8月の小売売上高が市場予想を大幅に下回ったことを受けて、中国経済の鈍化が懸念されたことも 重石となりました。 月の後半、流動性の確保に向けて、中国人民銀行(中央銀行)が金融市場に短期資金を供給したことなどが下 支えとなった一方で、国内の深刻な電力不足による経済への影響懸念のほか、前述の大手不動産開発会社の 債務問題を巡る動きなどに左右されて、中国株式市場は一進一退の展開となりました。最終的に、前月末比で下 落して月を終えました。 


今後の見通し: 現在の中国の経済成長モデルは、「成長の量から質重視」へと変化していると思われます。政府は国内の絶対 的貧困をなくすための過去10年にわたる取り組みを経て、優先順位を経済成長と持続可能性とのバランスや、 社会的平等と安全保障へと移していると考えます。昨年終盤以降、中国国内ではフィンテック、巨大IT企業、学習 塾、暗号資産(仮想通貨)、炭素排出量などの分野に新たな規制が導入されたことが、これらを裏付けていると思 われます。また、中国当局は、半導体、生命科学、ヘルスケアなどの国家戦略的に重要と位置づけている産業の 発展を優先するとともに、「ニューエコノミー」(今後の成長がより期待できると考えられる)産業の爆発的な成長が もたらす予期せぬ弊害にも対処しようとしていると考えます。 足元の中国株式のバリュエーションは、市場の調整を受けて魅力的な水準まで低下していますが、引き続き短期 的に当局による規制リスクの影響が市場の重石やボラティリティの上昇につながることが予想されます。 同国には、当局による規制強化の影響や競争激化などから、短期的な逆風が見込まれる企業が一部存在してい ますが、一方で優れた経営陣を配し、持続的な成長を実現し得る優良企業が多数存在していると考えます。懸念 材料は依然として見られるものの、当ファンドでは中国株式市場に対して、引き続き長期的な観点で楽観的な見 通しを有しています